借金の解決を図る債務整理ですが、この債務整理によって、生命保険を解約しなければならないこともあります。一見関係ないように思える両件ですが、実は密接に関係しているのです。
この生命保険に与える影響をしっかりと理解しておかなければ、債務整理のデメリットがより大きなものになりかねません。今回は、借金を債務整理することにより、生命保険が強制解約となるのか、また再加入について、詳しく解説していきたいと思います。
生命保険の種類よって影響が変わる
債務整理をする際に、生命保険に加入していると、債務整理による影響を受ける場合があります。しかし、それは全ての生命保険に適用されるわけではなく、影響を受けない生命保険も存在します。
以下について、それぞれ解説していきます。
掛け捨て型の保険は影響ない
とりあえず、生命保険に入ってみるという人には、掛け捨てタイプの生命保険が好評です。なぜなら、掛け捨てタイプの生命保険は、保険料が安く、加入のハードルが低いものであります。
しかし、その分解約の際に保険料が戻ってくることはなく、文字通り簡易的な生命保険です。その性質から、財産と見なされるポイントはなく、債務整理をしても、その影響は全く受けません。
積立型保険は財産とみなされる
年齢を重ねていき、しっかりした生命保険を考えるようになった人は、積立タイプの生命保険に入ることになります。積立タイプの生命保険は、掛け捨てタイプと違い、保険料は高い傾向にありますが、解約の際の保険料が戻ってきます。
この性質から、積立タイプの生命保険は財産として見なされるポイントを有しており、債務整理する際に、その影響を受けることになります。ある程度歳を重ねている人のほとんどが、この積立タイプの生命保険を利用していると言っても過言ではありません。
各債務整理別の生命保険への影響
掛け捨てタイプの生命保険は、その影響を全く受けないが、積立タイプの生命保険では、債務整理の影響を受けることになります。
しかし、その債務整理の全て方法によって、同じ影響を受けるわけではなく、それぞれ債務整理の方法によって、生命保険に与える影響に違いがあります。
以下について、それぞれ解説していきます。
任意整理
債務整理の中で、唯一裁判所を通さない方法として、その手軽さから、多くの債務者に利用されています。
任意整理では、債権者との話し合いにより、その後の借金の解決を図っていきます。
ということで、裁判所を通さない性質から、生命保険に与える影響は皆無といえますね。
個人再生
個人再生は、借金の大幅な減額が見込める債務整理として、多額の借金を抱える債務者に好評があります。
債務者は、最低弁済額という制度に則り、その後の返済をしていくことになります。
基本的に生命保険の影響を受けることはないですが、解約による保険料の還付が多額になると、借金が増えることに繋がります。
自己破産
借金のその全てが帳消しになる効力を持つ自己破産は、そのリスクも大きいです。
その中でも、所有する財産のほとんどを処分することになるのですが、金額にすると20万円以上の財産と明確に決められています。
生命保険もこれに当てはめて考え、仮に解約による保険料が20万円以上となる予測があると、解約する必要があります。
特定調停
あまり名前の聞かない債務整理ですが、簡単にいうと、債務者自身で行う任意整理のようなものです。
ということは、特定調停もまた、任意整理同様に生命保険の影響を受けることはありません。
この特定調停は費用は抑えることができますが、かかる手間を鑑みると割に合わないため、あまり利用する人がいません。
任意整理なら生命保険には影響しない
債務整理の種類によって、生命保険の影響が変わるということがわかりました。
その中でも、任意整理においては、ほぼ100%影響を受けることがないわけです。
任意整理以外の債務整理では、状況によっては、払戻金によって借金が増額したり、生命保険を解約しなければならなくなります。
しかし、任意整理では、裁判所を通さず、債権者との話し合いだけで、その後の解決を模索するため、その話し合いに生命保険は関係ないことになります。
よって、生命保険の解約リスクを懸念するのであれば、任意整理を利用することで、確実な債務整理が実行できますね。
どの債務整理をするかで生命保険に影響が出る理由
なぜ、債務整理によって生命保険に影響が出てしまうのでしょうか?
そこには、生命保険の性質が深く関係しており、債務者はこの性質をきちんと理解しておく必要があります。
以下について、それぞれ解説していきます。
解約返戻金も本人の財産である
債務整理をする上で、財産があるかどうかという部分は、かなり重要なことになります。掛け捨てタイプを除く生命保険には、解約による払戻金というものがあります。
この解約払戻金は、債務者の立派な財産として扱われるものになります。
財産は借金の返済に充てるべきだと見なされるため
借金を返済していく見込みがない場合に債務整理は行われると思います。そうした場合、もちろん所有する財産は、その借金の返済に充てるべきだと見なされます。
つまり、債務整理の種類によっては、生命保険を解約してまで、その財産を捻出する必要があるということです。
破産財団には将来の請求権も含まれている
破産財団とは
債務整理によって、破産手続きがされたとして、その債務者の財産は換金され、対象の債権者に分配されます。このとき、その財産の所有権は債務者から、破産管財人という裁判所から選任された立場の人間が中立に管理することになります。
この破産管財人が財産の処分をすることを破産財団といいます。
解約返戻金は差し押さえ禁止債権では無い
全ての財産が差し押さえできるわけではないですが、生命保険の解約による払戻金は差し押さえ禁止債権ではないです。そのため、生命保険の払戻金は時には、解約して差し押さえられてしまうことがあります。
債権者からすると、債務者が生命保険に加入していると、財産として回収できるということになりますね。
債務整理による生命保険への影響を防ぐ対策
債務整理の中でも、生命保険に大きな影響を与えるのが自己破産で、この影響を防ぐ方法がいくつかあります。これらの方法をうまく利用することで、生命保険に与える影響を最小限に留めたいものです。
自由財産拡張を行う
自由財産とは
債務者が自己破産後に所有した財産、差押え禁止財産、100万円未満の現金が自由財産とされています。また、生活に最低限必要とされる財産もこれに当たり、処分の対象からは外れることになります。
このように、自己破産は決して全ての財産を処分、またはその後の財産の所有は許されているということがわかります。
どうすれば自由財産を拡張できるのか
自由財産というものは法律で決められていますが、最終的には裁判所によって、その拡張の決定はされます。また、自由財産の拡張は誰でもできるわけではなく、裁判所が拡張基準を定めており、これを満たした場合に認められます。
その基準とは、具体的には債務者が今後生活をしていく中で、必要だと判断できるものかどうかになります。実際に申立てをしてみないことには、できるかできないかの判断はしかねるので注意が必要です。
生命保険の契約者貸付制度を使う
生命保険の契約者貸付制度とは
生命保険の解約による払戻金の範囲内において、融資を受けられる制度になります。下手にカードローンで融資を受けるよりも金利が安く、審査もないことから債務整理していても問題なく利用できます。
意外と知られていない知識なので、これを機に覚えておくと良いですね。
生命保険の契約者貸付制度を使うとどうなる?
実際に生命保険の契約者貸付制度を利用すると、返済期限もないので、自分のペースで返済することができます。しかし借りすぎによって払戻金の範囲内を超えてしまった場合は、解約対象となってしまうので注意が必要です。
金利が安いのが特徴ですが、保険会社や加入したタイミングなどによっては、金利が高くなってしまうことがあるので、情報認識の精度を上げておくと良いです。
保険法の介入権を使う
保険法の介入権とは
主に自己破産において、生命保険の解約払戻金は財産と見なされるため、裁判所の選任した破産管財人によって、処分されてしまいます。そんな場合、保険法の介入権を行使することによって、解約を免れ、保険契約を継続することができるのです。
生命保険はどうしても、高齢になればなるほど加入が難しくなるもので、高齢化問題に拍車がかかる現代において、時代に合った権利といえます。
保険法の介入権を使うとどうなる?
生命保険の解約払戻金は、主に自己破産する際に、債務者から破産管財人に所有権が移り、債権者に分配されます。しかし、保険法の介入権を行使すれば、解約の通知があってから一ヶ月以内に、解約払戻金相当の金額を破産管財人に支払うことで、解約をストップし、保険の契約を存続させることができます。
これにより、自己破産しても、生命保険は守ることができるというわけです。
解約返戻金に相当する額を破産財団へ組み入れて解約を避ける
破産財団の性質をうまく利用して、生命保険の解約を避けることができます。それは、生命保険の解約払戻金の相当額をあらかじめ調べておき、その金額を破産財団へ組み入れるのです。
そうすることによって、生命保険の解約を避けることができ、新たに生命保険に加入するという手間を省くことができます。
債務整理後に生命保険に入る事は可能
生命保険は、借金とその扱いが異なることから、債務整理における影響は全く違います。どちらかといえば債務整理に直接関係のない生命保険は、その後の利用に制限がかかりません。
生命保険は借金ではないので信用情報は関係が無い
債務整理後は、信用情報の記録がブラックになるため、ローン組みなどはできなくなります。しかし、生命保険の加入については、信用情報は一切関係ありません。
そのため、債務整理した後、生命保険に加入することは、その保険会社の審査だけであり、債務整理の影響は全く受けないことになります。
信用情報は返済能力調査以外の用途に使えない
個人・法人問わず、信用情報機関への問い合わせは誰でもできます。しかし、返済能力の確認以外の用途で利用することはできず、よって生命保険の会社が個人情報を調べることはまずありません。
債務整理はあくまでも、借金の信用情報だけが不利になるだけであり、他の生活における支障はないということがわかりますね。
生命保険を滞納しても失効するだけ
生命保険は2ヶ月以上滞納すると失効に繋がる
生命保険は、保険料の滞納をしてしまうと、残りの保険料を一括で請求されてしまいます。また、保険契約の失効となることに繋がり、確実に支払っていきたいものになります。
それでも、遅延損害金や利子の発生はなく、借金のように恐れるような存在ではないです。
生命保険の滞納でブラックリストに載ることは無い
借金を滞納すれば、場合によって、個人情報にいわゆるブラックリスト、事故記録が登録されます。しかし、生命保険の滞納でこのブラックリストに載ることはありません。
なぜなら、個人情報機関の管轄外であり、生命保険は借金とは扱いが異なるからです。
自己破産と個人再生は生命保険の解約を迫られる場合がある
債務整理と生命保険、これらは全く異なるジャンルであり、片方の影響を受けないものだと思っていました。特に、債務整理の中でも、個人再生と自己破産については、生命保険に対して大きな影響を与えてしまう可能性があります。
場合によっては、保険の解約を迫られて、その解約による払戻金を借金の返済に充てられることになります。生命保険は、高齢であれほど加入するのが難しくなってしまうものなので、できれば解約は避けたいと考えますよね。
そうした場合には、いくつか解約を防ぐ方法もあるので、うまく利用していきたいものです。