住宅ローンを組む際、金額設定に関しては様々な考え方があります。けれどもあなた自身に適正な返済額から住宅ローンを考えることで、マイホームで健全で安心な生活を送るカギとなるのです。
この記事では、住宅ローンの返済額の目安についてシミュレーションも交えてご紹介していきます。
住宅ローン返済比率は年収の25%が目安
住宅ローンの返済額として適正な金額の割合である返済比率は、一般的に年収の25%までが適正と言われています。そしてさらに理想を言えば、返済比率は20%程度に抑えた方が生活への支障が少なく安全と言えるでしょう。
もし多くの借入を行い返済比率が30%を超えてしまうと、生活への支障が大きくなりすぎてしまいます。月々の返済に余裕が無くなってしまうと滞納にもつながってきてしまい、最悪の場合にはせっかく買った住宅を手放さなくてはならない可能性も出てきてしまうのです。
借入可能額限界まで借り入れるのは危険?
借入の際には返済も考慮した適正な価格を考える必要があります。適正価格を超えて借入をすることも可能ではあるものの、そこには思わぬ危険性があることを認識しておかなくてはなりません。
銀行は年収の8倍まで貸し出してくれる
適正な返済比率になるよう借入を行うと、借入額は年収の5倍~6倍程度になり、ここまでの金額が適正な借入金額であると言われています。ところが銀行に住宅ローンの申し込みを行うと、多くの場合で年収の8倍までの金額を借り入れることができてしまうのです。
この理由には、銀行は長期金利固定住宅ローンの債権を住宅金融支援機構へ売却できることが挙げられます。つまり固定金利ローンを貸出して即債権を住宅金融支援機構へ売却してしまえば、その時点で利益が確定し、仮に債務者が債務不履行状態に陥ったとしても不利益を被らなくなるのです。
銀行が債務者の返済能力を超えた住宅ローン貸出しを行うことは、しっかりと認識しておきましょう。
「借りられる金額」と「返せる金額」は違う
住宅ローン借入を行う際には、「借りられる金額」と「返せる金額」は違うと念頭においておくことが非常に大切です。
先ほどお話しした通り、住宅ローンの貸出しの際銀行は適正な返済比率を超えるような額の貸出しも行います。銀行が沢山貸してくれるからと安心して必要以上に高額な住宅を購入してしまうと、その後の日常生活に思わぬ悪影響を及ぼしかねません。
銀行が貸してくれる金額から購入する住宅を決めるのではなく、あなた自身が月々返せると見込める金額から逆算して検討するようにしましょう。
年収別の借入可能額と理想的な借入額
ここで、年収別に借入可能な額と理想的な借入額を整理して比較しておきたいと思います。
<基本条件>
融資金利:1.5%
返済期間:35年ローン
年収 | 借入可能額 | 理想的な借入額 |
200万円 | 1,633万円 | 1,000万円~1,200万円 |
300万円 | 2,449万円 | 1,500万円~1,800万円 |
400万円 | 3,810万円 | 2,000万円~2,400万円 |
500万円 | 4,762万円 | 2,500万円~3,000万円 |
600万円 | 5,715万円 | 3,000万円~3,600万円 |
700万円 | 6,668万円 | 3,500万円~4,200万円 |
800万円 | 7,620万円 | 4,000万円~4,800万円 |
上記表の内、借入可能額はフラット35のホームページを参考にして算出しています。
こうして確認してみると、返済を考えた際に理想的な借入金額と実際に借入出来る額との乖離がいかに大きいかを実感していただけるのではないでしょうか。
額面年収と手取り年収の違いにも注意
年収の話をする際には、「額面年収」と「手取り年収」の違いについても認識しておく必要があります。
額面年収 | 税金や保険料等が差し引かれる前の年間総支給額 会社員であれば、源泉徴収票の「支払金額」欄に記載がある |
手取り年収 | 税金や保険料等が差し引かれた後、実際に手元に支給される金額 会社員であれば、給与明細の「差引支給額」欄に記載がある |
年収によっても変わってきますが、手取り年収は額面年収の約70%~80%程度と考えると様々な局面で便利です。
年収を聞かれたら額面年収額を答えるのが一般的であり、住宅ローンの話をする際にもご自身の額面年収を元にインターネットの情報等を参考にする必要があります。
そのため、手取り年収に直して考えると返済比率等は当然上がることを考慮しておかなくてはなりません。
月々の生活費全体を考慮した住宅ローン返済プランが重要!
ここまで、年収から想定した適正な住宅ローン借入金額についてお話ししてきました。しかし実際に毎月の返済額を考えるにあたっては、月々の生活費全体を見据えて返済計画を立てていく必要もあると言えます。
実際の支出は家庭ごとに異なる
総務省統計によると、2018年度の1世帯当たりの毎月の支出は、下記の通りとなっています。
食費 | 62,733円 |
光熱・水道 | 18,565円 |
家具・家事用品 | 8,938円 |
被服及び履物 | 8,990円 |
保険医療 | 11,246円 |
交通・通信 | 35,523円 |
教育 | 8,027円 |
教養娯楽 | 24,813円 |
その他消費支出 | 49,080円 |
合計 | 227,915円 |
出典:政府統計ポータルサイト
住居費以外にも多様な支出が存在することは意識しなければなりませんし、実際にはそれぞれの家庭生活に必要な光熱費や教育費等は変化してきます。
あなた自身のご家庭の支出について一度整理していただき、理想的な返済計画を立ててみましょう。
ライフプランニングにはツールを利用しよう
また、ライフプランニングを更に細かく分析するために日本FP協会が各種ツール世用意してくれているためするため、有効利用することをおすすめします。ここでは、代表的なツールについてご説明をいたしますので、一緒に一つずつご確認してみてください。
ライフイベント表
下記のように、あなた自身やあなたの家族の今後の予定について、10年後、20年後と予定を書き込んでいきます。将来についてより具体的にイメージするきっかけに利用することができるのです。
(例)
年 | 年齢 | ライフイベント | かかるお金 | ||||
夫 | 妻 | 長男 | 次男 | 長女 | |||
2019 | 32 | 30 | 6 | 4 | 0 | 次男幼稚園入園 | 入園費5万円 |
2020 | 33 | 31 | 7 | 5 | 1 | 長男、次男七五三、長男小学校入学 | 15万円、入学費用8万円 |
2021 | 34 | 32 | 8 | 6 | 2 |
出典:日本FP協会HP
個人バランスシート
現在の資産や負債状況を書き出すことで、家計の健康状態が確認できるようになります。
(例)
資 産 | 負 債 | ||
現金 | 万円 | 住宅ローン | 万円 |
普通預金など | 万円 | 自動車ローン | 万円 |
定期性預金 | 万円 | カードローン | 万円 |
貯蓄型の保険 | 万円 | 奨学金 | 万円 |
株式 | 万円 | その他 | 万円 |
債券 | 万円 | ||
投資信託 | 万円 | ||
その他の投資商品 | 万円 | ||
住宅 (現在の市場価格) |
万円 | ||
その他 | 万円 | ||
資産合計 | 万円 | 負債合計 | 万円 |
資産合計-負債合計=純資産 | 万円 |
出典:日本FP協会HP
キャッシュフロー表
現在から将来までの家計についてキャッシュフロー表を作成し、今後必要になる金額や足りない部分等詳細についてチェックしましょう。
(例)
年 | 2014 | 2015 | 2016 | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 |
経過年数 | 現在 | 1年後 | 2年後 | 3年後 | 4年後 | 5年後 | 6年後 | 7年後 |
( )の年齢 | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 |
( )の年齢 | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 |
( )の年齢 | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 |
( )の年齢 | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 |
( )の年齢 | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 |
ライフイベント | ||||||||
( )の収入 | ||||||||
( )の収入 | ||||||||
一時的な収入 | ||||||||
収入合計(A) | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
基本生活費 | ||||||||
住居関連費 | ||||||||
車両費 | ||||||||
教育費 | ||||||||
保険料 | ||||||||
その他の支出 | ||||||||
一時的な支出 | ||||||||
支出合計(B) | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
年間収支(A-B) | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
貯蓄残高 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
出典:日本FP協会HP
実際に作製する時は横に表を増やしていくイメージです。子供の成長や勤務先の引退までの時間を考慮し、20年~30年程度を目安に作成してみると便利に利用できます。
住宅ローン借入はなるべく早期に決断
ここまでは住宅ローンの適正な借入金額について、年収の面や月々の生活費の面から多角的に考えてきました。そしてここからは、住宅ローン借入に関し最適なタイミングはいつなのかということについて考えていきます。
住宅ローンの返済開始はなるべく早い方が良い
結論から話をしますと、住宅ローンの返済開始時期はなるべく早期であることに越したことがないと言えます。
住宅ローンの返済期間を設定する際には35年の長期でローンを組むことが一般的であり、その場合、返済完了時には比較的高齢になっている事が想定されます。35年後にご自身の健康や収入がどうなっているか不確定で不安な部分も多く、可能な限り早期に開始をした方が安心と言えるのです。
また、住宅ローンを組む場合完済時の年齢制限が設けられていることも多い点も、返済開始を早めた方が良い理由の一つと言えます。
健康状態もローン審査では大切
また、ローン審査そのものを無事通過することを考えても、早期にローンを組んで返済を開始した方が賢明と言えます。健康に不安がある状態だと、万が一のケースではローンそのものが組めなくなってしまう事もあるかもしれません。
ローンを組むタイミングが遅くなればなるほど当然高齢になっていきますから、その分健康リスクも高まってきてしまいます。収入や勤務年数等の要素もあるため一概に若い方が良いとは言い切れないものの、住宅ローンを組む予定があるのであれば早期に金融機関へ相談に行った方が良いでしょう。
住宅ローンを延滞せずに返済するコツ
住宅ローンは長期に渡って返済計画を立てて返済していく借入金です。あくまでも借金であり、返済が滞れば様々な経済的不利益が発生してしまいます。ここでは、住宅ローン返済に関して滞納の危険性と安全に行うコツを共有させていただきます。
住宅ローンの滞納が続くと最悪競売に
住宅ローンを滞納してしまったとしても、1回や2回であればそれほど大きな問題になることはありません。遅延損害金は発生してしまうものの、金融機関から支払い督促を受けて遅延損害金を併せて支払いを行えば、問題は解消されます。
しかし早ければ3カ月以上の滞納をしてしまう事で「期限の利益」を喪失してしまい、分割返済ができなくなる可能性があるのです。
更にそのまま放置してしまうと、半年程度で裁判所から「競売期日通知」連絡が来てしまい、記載の期日に競売にかけられることを拒否できなくなってしまうのです。
住居に住めなくなってしまっては大変ですから、滞納をしない工夫をしていく必要があると言えます。
住宅ローン減税を利用
まず挙げられる方法としては、住宅ローン減税を利用することが挙げられます。
住宅ローン減税は、正式名称を「住宅借入金等特別控除」と言います。住居購入に際して住宅ローンを利用した場合の一定期間に、住宅ローン年末残高の一定割合相当額を毎年の税金(所得税や住民税)から控除してもらえる制度のことなのです。
毎年の税金負担はどの家庭にとっても大きなものがあります。住宅ローン減税を利用して負担を軽減し、自由に使える資金を少しでも多く確保することで、より安定的な返済生活を送ることができるでしょう。
早期返済には繰り上げ返済を利用
住宅ローンを始めとした借金返済に当たっては、返済期間を短くすることで支払う利息をなるべく少なくすることであると言えます。
単純に考えて、月々の返済額の設定そのものを上げてしまえばそれだけ返済期間は短くて済みます。しかしその場合月々の負担は自身の返済能力と比べ大きなものになってしまい、常に余裕の無い状態が続くことになってしまうのです。
この状態は経済的にはもちろん精神的にも大変つらいものと言え、健全で持続可能な返済計画とは言えなくなってしまいます。
そこでおすすめなのが、返済額は無理のない設定にしておき、余裕の出た時に繰り上げ返済に充てる方法です。繰り上げ返済は全て元本に充当してもらえるため、早期返済には最適の手段と言えるでしょう。
ローンを組む時に頭金も入れる
早期返済を計画するには、ローンを組む段階で一定額の頭金を用意しておくことも大切です。
例えば、4,000万円のマイホームを購入する際に全額を住宅ローンで借り入れるのではなく、1,000万円の頭金を入れて遺りの3,000万円を住宅ローンに頼るようにする。そうすることで借入金自体が減りますから、それだけ早期に返済することが可能になってくるのです。
頭金の用意と言っても簡単なものではもちろんありません。けれども、逆に考えると頭金を一定用意できる算段が付いた段階が、住宅ローンを組む適切な段階であるともいえるのではないでしょうか。
無理のない返済計画になるよう、返済目安額を計算しよう
マイホームの購入は、人生で最も大きな買い物であると言われます。その際の借金である住宅ローンはやはり高額で長期返済を必要とする借入金になりますから、慎重な計画作りが必要となるのです。
住宅ローンを組む際に住みたい住居の値段から考えることも重要なのかもしれません。けれどもその後の返済生活はご自身の今後の大部分を占めることになりますから、無理のない健全な返済計画を立てるように、返済目安額から考えて計算をしていきましょう。