独身の人が借金を抱えたまま、亡くなってしまった場合、その借金はどうなってしまうのでしょうか?基本的に相続人は配偶者または子供ですが、独身の人であれば両親が筆頭の相続人となります。
このように、債務者が死亡したからといって、借金が無くなることはありません。今回は独身の人が借金を抱えたまま死亡した場合について、詳しく解説していきたいと思います。
独身の人が借金を抱えたまま死亡するとその家族に相続される
独身の人が借金を抱えたまま、死亡した場合、その借金は消滅することはなく、家族に相続されることになります。
そのため、借金を完済せずに亡くなってしまうと、残された家族に迷惑をかけてしまいます。
不慮の死亡であれば仕方ないですが、亡くなってまで、家族に迷惑をかけたくないのであれば、借金はきちんと清算しておきたいものです。
独身の人が借金を抱えたまま死亡したときの相続順
亡くなった人の財産及び借金を相続する場合、その相続すべき順番が定められています。基本的には、この順番通りに相続権が移行していくことになります。
①両親が第一順位
被相続人が亡くなった場合の筆頭相続人は、被相続人の配偶者と子供ですが、独身であるので存在しません。仮に被相続人に子供がいれば子供が相続人になりますが、いなければ被相続人の両親が妥当です。
本来は両親ではないのですが、独身という状態により消去法で筆頭相続人となります。
②兄弟姉妹が第二順位
本来の相続順位でいえば、第三順位にくる兄弟姉妹は、独身のケースだと、第二順位にきます。これも消去法によって繰り上げられており、独身のケースであれば相続すべき関係者が少なくなります。
両親が亡くなっていれば、その相続の権利は兄弟姉妹へというのはごく自然な流れですね。
③甥姪が第三順位
両親、兄弟姉妹も亡くなっていた場合などで、相続することができない場合は、甥姪にその相続権は移ります。兄弟姉妹が厳しいのであれば、その子供ということになり、これも自然の流れなのかもしれません。
仮に甥姪が相続しなければ、相続財産管理人がその相続を受けることになります。
独身で死亡し、誰も相続人がいない場合借金はどうなるか
独身の被相続人の相続順位について触れましたが、仮に相続人がいない場合、果たして借金はどうなってしまうのでしょうか?
このまま誰も相続しないなんてことになると、債権者は債権の回収ができないことになってしまいます。
以下について、それぞれ解説していきます。
家庭裁判所から相続財産管理人が選任される
被相続人の相続人が不在であれば、借金の回収は不可能になってしまうため、債権者は家庭裁判所に対して、相続財産管理人の選任申立てを行います。
これは相続人不在になった場合に、自動的に選任されるわけではなく、あくまでも申立てがあった場合に、選任されるものになります。
このため、債権者は仮に相続人が不在になっても、借金の回収を行うことができるということです。
10ヶ月経って相続人が見つからないと借金は国のものに
被相続人の相続すべき人に権利が移っても、その人が相続しなければ、その権利は定められた優先順位の元に、移り続けます。
そして、誰も相続する人がいなくなった場合は、10ヶ月経過の後、その借金は国のものとなるのです。
この間に、債権者より相続財産管理人の選任申立てがあった場合は、その限りではありません。
独身の家族が死亡した場合借金は相続放棄できる
被相続人が亡くなったからといって、必ずしも相続しなければならないわけではありません。
確かに、相続の優先順位はありますが、それはあくまでも優先順位であって、拒否することもできます。
これを相続放棄といい、財産よりも借金のほうが多いなど、相続人にとって不利益である場合にやるべき方法です。
相続放棄とは
相続放棄とは、被相続人が死亡した場合、決められた優先順位の元に、その相続権が移りますが、その権利を放棄することです。
相続人が相続すべきは、プラスの財産だけではなく、借金などのマイナス財産も相続しなければいけません。
そのため、相続人にとって不利益な相続になる場合は、こちらから拒否できるというものになります。
借金を相続放棄するメリット
相続放棄するメリットは、圧倒的にマイナスの財産つまり借金を背負う必要がなくなるという部分にあります。
相続の性質上、プラスの財産・マイナスの財産どちらか一方を相続することはできないので、マイナスが多い相続財産の場合は大きなメリットです。
また、遺産分割協議という、少々面倒くさい手続きに参加する必要もないことも挙げられますね。
借金を相続放棄するデメリット
仮に相続放棄をする際は、相続しませんと簡単に終わる話ではなく、家庭裁判所での手続きが必要となり、手間と費用がかかるということです。
また、自身が相続放棄をすることによって、次順位の関係者にその相続権が移ることになるので、罪悪感を覚えてしまうことがあります。
相続放棄は全ての財産を放棄するので、仮にプラスの財産のほうが多ければ、損をしてしまうことになります。
独身で死亡した家族の借金を相続放棄する際の注意点
被相続人の財産を相続しては不利益を被ると判断し、実際に相続放棄を決めた場合、いくつかの注意点があります。
この注意点に気を付けなければ、大きく損をしてしまう可能性があるので、注意してください。
以下について、それぞれ解説していきます。
一度相続放棄を決めると後からの撤回は不可能
一度相続放棄を決めた場合、後からの撤回または変更は不可能となります。
相続放棄を決めた時期では、マイナスの財産のほうが多かったとして、後にプラスの財産が判明して、トータルで相続する方が得であるとわかった場合、撤回したくてもできません。
このような失敗を招かないためにも、被相続人の財産状況はしっかりと調べておくことが必要です。
相続放棄の手続きには期限がある
相続放棄するには期限があり、被相続人が亡くなってから、3ヶ月以内と決められています。
この期間を熟考期間といい、相続放棄などで、相続すべき人が変わっても、続いていくことになります。
なので、相続の優先順位が下位の人にその権利が移ったときには、期限が迫っているという状況も充分にあり得ます。
独身で死亡した家族の借金を相続放棄する以外の解決手段
独身で亡くなった人の借金を、相続放棄以外で解決する手段はないのでしょうか?相続にはいくつか種類があり、相続放棄以外の相続方法で相続することによって、借金の解決を図ることができます。
単純承認
これは、被相続人が亡くなった場合の財産を、プラス財産・マイナス財産関係なく、全て相続する方法です。一般的な相続方法であり、大多数の人がこの相続方法を取ります。
相続したプラスの財産でマイナスの財産つまり借金の解決をするというものです。あくまでも、マイナス財産よりもプラス財産が上回っていることが前提となります。
限定承認
限定承認とは、マイナス財産がプラス財産を上回っていた場合、相続人が損をしてしまうことになりますが、あくまでもプラス財産の範囲内でのマイナス財産の解決を図るものになります。これによって、相続人は相続したことによって、損をすることがなくなるため、相続人にとって有益な相続方法になります。
ただし、債権者はプラス財産の範囲内の債権しか回収できないので、マイナス財産の全てを回収することはできなくなります。
死亡した独身の家族の借金を相続放棄するための必要書類
相続放棄するには、まずは相続放棄申述書という書類が必要になります。これは、相続放棄しますという旨の書類で、必ず作成して裁判所に提出する必要があります。
あとは申述者の戸籍謄本、被相続人の戸籍謄本や住民票などが必要になり、役所関係の書類はおおよそ1万前後で揃えられます。また、収入印紙も必要になり、800円程度で警察署などで入手することができます。
このように、相続放棄するには、必要書類を集める手間とある程度の費用が必要になり、それを家庭裁判所に提出しなければならなく、そう簡単にできるものではないことがわかりますね。
独身の家族が死亡しても相続放棄しなければ返済義務は残る
このように、独身の人が死亡したとしても、その借金は消えることはありません。然るべき優先順位をもって、相続人にその権利が移ることになるので、相続人はその権利を相続放棄でしか、拒否することはできないのです。
独身だからといって、派手に借金を作っていたら、その借金が両親もしくは兄弟姉妹、または甥姪にまで迷惑をかけかねないということです。親族に迷惑をかけたくないのであれば、生きているうちにできる限り自分の手で借金を完済しておくことが大切ですね。