この日本では、健康で文化的な最低限度の生活を保障してくれる制度があります。それは生活保護という制度であり、誰しもが一度は名前くらいは聞いたことがあると思います。
この生活保護という制度があるおかげで、少なからず生活苦の人たちを救っているのが現状です。今回は、そんな生活保護についてその支給額や最低生活費、またはその算出方法について詳しく解説していきたいと思います。
生活保護は厚生労働省算出の最低生活費を基準にしている
生活保護とは、生活に困窮する者に対して、健康で文化的な最低限度の生活を保障するものです。
支給される生活保護費は、厚生労働省算出の最低生活費を基準にしており、収入が最低生活費に満たない場合は、最低生活費を収入から差し引いたものを支給します。
昨今、この生活保護の最低生活費が問題となっており、普通に労働している者が、これ以下の収入で生活しているということで、物議を醸しています。
ようするに、最低生活費が高いのではないかということで、大きな社会問題となっているのです。
生活保護とは何か
全ての国民は、健康で文化的な最低限度の生活をしなければならないと憲法で定められており、その生活を保障するために生活保護は存在します。
国民の三大義務である労働が満足にできない、という人の為に設けられた、生活するために必要な国の制度であります。
以下について、それぞれ解説していきます。
働くことができない、収入が少ない人が最低限の生活を送るための制度
全ての国民が満足に労働できるわけではなく、そういった人たちを救済する目的で、生活保護という制度は作られました。
また、頑張って労働しても、満足な収入を得られない人も同様に、国が最低限度の生活を送れるように、生活を保障してくれるものです。
もちろん、労働することに問題がない人は、受給することはできません。
窓口は各自治体の福祉事務所
生活保護を検討している人は、各自治体の福祉事務所で、手続きを行っています。
ただし、生活保護を受給するには、様々な条件をクリアする必要があり、生活扶助してくれる人が親族にいれば、受給することはできません。
また、生活保護の不正受給が大きな社会問題となっており、国も生活保護の審査には、厳しくなっている現状があります。
最低生活費算出に関わる要素
生活保護の最低生活費というのは、居住地域や世帯人数、家族の年齢によって、異なっています。
それは当然であり、生活保護を受給するべき人に一律の最低生活費を定めてしまっては、多く貰いすぎてしまう人、少なすぎて生活できない人などが発生してしまいます。
以下について、それぞれ解説していきます。
居住地域
日本国内でも、どこを居住としているかで、最低生活費の算出が変わってくるのは当然ですよね。
そこで級地制度という、地域ごとの立地特性に応じて、ランクを6つに分けています。
このランクに応じて、最低生活費の差別化を図っています。
世帯人数
生活費は、世帯人数に応じて、二倍三倍と増えていくわけではありません。
そこで、逓減率というものが用いられ、生活保護費が膨大になっていくのを防いでくれます。
逓減率により、世帯人数の数による、不公平を防止するために、この方法が使われているのです。
家族の年齢
受給対象者の年齢によっても、生活費の増減を付けなければ、不平が出てしまいます。
そこで、厚生労働省では、生活扶助基準額表において、細かな年齢別の基準額を定めています。
おおまかには、乳幼児や高齢者は成人よりも、グッと生活費が抑えられており、調和がとれているといえます。
生活保護の最低生活費に含まれる扶助は8つ
扶助の名称 | 支給方法 | 何のための扶助か |
生活扶助 | 金銭給付 | 生活保護のベースで、日常生活を送るための費用 |
住宅扶助 | 金銭給付 | 住んでいる住居の家賃 |
教育扶助 | 金銭給付 | 義務教育を受けるための費用 |
生業扶助 | 金銭給付 | 事業を行うために資金、就労における技能習得の費用 |
医療扶助 | 金銭給付 | 国民健康保険と同等のレベルでの医療を受けるための費用 |
介護扶助 | 金銭給付 | 介護保険と同等のレベルでの介護を受けるための費用 |
出産扶助 | 金銭給付 | 出産の際に支給される費用 |
葬祭扶助 | 金銭給付 | 葬儀の際に支給される費用 |
生活扶助は金銭給付、生活保護のベースで、日常生活を送るための費用です。住宅扶助は金銭給付、住んでいる住居の家賃などになります。教育扶助は金銭給付、義務教育を受けるための費用です。
生業扶助は金銭給付、事業を行うために資金、就労における技能習得の費用などです。医療扶助は現物支給、国民健康保険と同等のレベルでの医療を受けられます。介護扶助は現物支給、介護保険と同等のレベルでの介護を受けられます。出産扶助は金銭給付、出産の際に支給される費用です。葬祭扶助は金銭給付、葬儀の際に支給される費用です。
このように、生活保護の最低生活費には、上記8つの扶助が含まれており、手厚く国民の生活を保障してくれるのです。ただし扶助の多くが金銭給付なので、その用途が近年問題視されている部分でもあります。
生活保護の生活扶助には加算される要素がある
生活保護の最低生活費は8つあると紹介しましたが、その中の生活扶助について、さらに加算される要素があります。もちろん全ての受給者が受け取れるわけではなく、条件を満たしている人が対象となります。
以下について、それぞれ解説していきます。
妊婦加算
生活保護受給者が妊娠した場合に支給されます。妊娠初期から妊娠6ヶ月、妊娠6ヶ月から出産までで支給額が変わり、後者である妊娠6ヶ月から出産までの期間のほうが支給額が高いです。
認定方法は母子手帳で確認することになり、医師による診断でも可能です。
産婦加算
生活保護を受給中に妊娠、出産した場合に支給されるのが、この産婦加算です。人工中絶を行った場合や死産した場合にも、受け取ることができます。
受給期間は出産した日から最長で六ヶ月間となっており、支給額は級地によって前後します。
母子(父子)加算
これは、シングルマザーまたはシングルファザーと呼ばれる、いわゆる片親による児童を持つ世帯に扶助されるものです。児童扶養手当という制度とは別枠での扶助を受けることができます。
加算額は級地によって前後し、児童が18歳になるまで、または再婚するまで支給することができるのです。
児童養育加算
生活保護を受給する世帯において、児童がいる場合に、児童養育加算が発生します。児童手当という制度がありますが、それとは別に扶助を受けることができます。
対象児童は中学校卒業までとされており、それまでは毎月10,000~15,000円の支給がされます。
障害者加算
障害者の人が生活保護を受給する場合、この障害者加算に適用することになります。おおよそ毎月3万円前後の生活費が支給され、身体障害者手帳1級ないし2級または精神障害者保障福祉手帳1級を所持している障害者が対象となります。
ここも全ての障害者が対象となるわけではなく、特に重度の障害を持っている人だけが対象となるわけです。
冬季加算
冬季加算は、11月から3月にかけて、生活扶助に加算されるもので、冬季における暖房費に対して発生します。この冬季加算は、北海道や東北地方などの寒冷地に居住を置く受給者だけが対象というわけではなく、全ての受給者が対象となります。
ただし、その支給額は寒冷地のほうが高い傾向にあり、世帯人数も多いほうが多くもらえることになります。
生活保護の具体的な算出方法
実際に生活保護を受給するには、どのような算出方法となるのでしょうか?そこには、まず居住地域から世帯人数の把握、生活扶助に付随する条件の確認した上で決定されます。
以下について、それぞれ解説していきます。
①居住地域の級地を調べ、それに応じた世帯全員の支給額を足す
まず、受給対象となる人の居住地域の級地を調べることから始まります。
級地は6つに分けられており、それが生活保護費のベースとなります。
そこに、世帯全員分の支給額を足して、合計を出します。
②世帯人数による逓減率を掛ける
続いて、世帯全員分の支給額に、逓減率を掛けます。
これは、世帯人数の増加によって、生活保護費が多すぎず少なすぎずという絶妙な数値を弾きだすための方法です。
この逓減率によって、世帯人数の増加による生活保護費が莫大な金額となり、不平不満がでないように抑えることができます。
③級地と世帯人数に応じた加算額(生活扶助費 第2類)を足す
次は、級地と世帯人数に応じた加算額を足していくことになります。
いわゆる生活保護の最低生活費の扶助のことです。
現物支給もありますが、ほとんどが金銭支給となるので、生活保護費に加算していきます。
④必要に応じて前述の加算要素を足す
生活扶助費を足したのち、これで生活保護費が決定するわけではなく、さらに必要に応じて加算すべき要素を足していきます。
主に身体障害者や母子家庭であれば、さらに加増となっていきます。
詳しくは、福祉事務所の職員に相談して、条件が合うものは全て加算してもらうようにしたいですね。
生活保護支給の決め方
生活保護の支給には、収入がある場合と無い場合とで、少々違ってくる部分があります。まず、収入が全くない場合であれば問題ありませんが、少しでも収入がある場合は当然受給できる生活保護費は減ることになります。
以下について、それぞれ解説していきます。
収入が全くない場合
この場合における収入とは、どんな手段であろうとも手にしたお金は全て収入とみなされます。
なのでお金を手にした際は、都度報告しなければ不正受給となり、生活保護の廃止となってしまいます。
また基本的に無収入であれば、定められた生活保護費をそのまま受け取れることになります。
収入はあるが、最低生活費より少ない場合
収入が各級地で定める最低生活費よりも少ない場合、その差額分を生活保護費として受け取れます。
しかし収入がある場合は一定額の控除があるので、結果的には生活保護費はもっと少ないことになります。
このように労働収入がある人は、生活保護を利用してもあまり恩恵がないように作られているのです。
生活保護の最低生活費は本人の状況により変化するもの
このように、生活保護費は、それぞれ最低生活費というものによって、その金額が厳格に決められています。居住地域や世帯人数、または年齢によって、大きく受給額が変わることになります。なので、全ての生活保護受給者が一律で同じ金額の保護費を受給しているわけではないということです。
最後に生活保護費は、健康で文化的な最低限度の生活ができない人のための制度なので、自分の生活状況を偽り、不正に受給するなどは許される行為ではありません。